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鋳物ブログ

鋳造作業法

第15章 鋳込作業

第1節 鋳込準備作業について知っていること

溶湯を鋳込むに当って、次のようなことを心掛けねばならない

1.鋳型温度

溶湯を鋳込む際の三大要素は、鋳込温度、鋳込速度とこの鋳型温度である。一般に鋳込温度や速度には、関心を持っているが、あまり鋳型温度については、気にしない、しかし、溶湯が鋳込まれて最後に押湯の部分にあがって来た溶湯の温度を見ると、最初に鋳込んだ溶湯の温度と差のあることが解ろう。その点方案上からも早く鋳込まれることが必要だが、温度差を出来るだけ少なくするためには、冷えきった鋳型よりも熱い鋳型の方がよいことが解ると思う。

試片
NO.
出湯温度 鋳込温度 Sc 化学分析
T.C Si Mn P S
NO.1 1540゚C 1360゚C 0.94 3.32 2.09 0.75 0.154 0.091
NO.2 1550 1340 0.94 3.42 1.89 0.60 0.097 0.075
NO.3 1560 1330 1.10 4.03 1.78 0.50 0.038 0.053
NO.4 1550 1340~1350 1.04 3.80 1.86 0.65 0.038 0.056

 

2.鋳込開始時間

溶解作業が始まると溶解の責任者はその鋳型のカブセ前完了の時間を開き、その鋳型に入る溶湯の材質をたしかめ、造型完了の時期をねらってその材質の溶湯を出すわけですから、少なくとも鋳込開始時間が計画通り行くかどうかを溶解責任者に連絡しなければならない。溶解の方では、連続出湯しているから時間的に違って来た場合は、第二の手段をとらねばならないから。その点、熱風乾燥機を使って鋳込直前に取りはずし、鋳込作業を行うことは理想的である。更に金型については特に著書である。金型の予熱温度を変えることに依り、鋳鉄の機械的性質が種々変化する。その例を第1図及第2図に示す。第一図は金型温度を常温から500゚Cあげた場合の鋳鉄鋳物の表面硬度を調べたものである。第二図は、抗張力との関係を調べたものである。一般に肉厚の薄いものに対しては、金型温度は、高い方がよく、肉厚ものに対しては低くてもよい。150~370゚C(C.C.M)、200~400゚C(日本強靭)、中大型鋳物では150~250゚C薄型では、350~450゚C(東欧)t゚C=470-26Ep>=50゚Cが、適温であろう。400゚C以上になると、グラファイドが粗大化する傾向にある。
尚、図中NO1.2.3.4の試料の化学成分及鋳込条件は第一表の通りである。

3.鋳型について

手落ちがないかどうか、ハリ止めを必要とするならば充分であるかどうか、クサビはゆるんでいないかどうか目ぬりは充分であるかなど、クサビはゆるんでないかどうか目ぬりは充分であるかなど、乾燥型の場合、チェックしなければならない。又取鍋や湯汲は、充分に予熱してあるかどうかを確める必要がある。ストッパー式の取鍋やドビン式取鍋を使用しない場合は、鋳型にノロが入らないようにカケゼキ防 板をつけたり、取鍋に口受けを準備したりしなければならない。又、取鍋をどの位置に持って行って注湯するか、あらかじめ、予定位置を決めて置くこと。この鋳型は、何度で鋳込むかは、すでに方案が指示されていれば問題ないが、指示されない場合には、上司に確かめて置く必要がある。又、溶湯の材質は解っているのだからあらかじめ、湯面模様を頭の中にえがいて置くべきである。

第2節 鋳込み作業の容量について知っていること

鋳込みに対して、先ず次のことを確かめて見よう。

  1. トリベの乾燥は、充分であるか
  2. トリベの予熱は、充分であるか
  3. トリベのランニングは良いか
  4. 取鍋に入った溶湯の量は充分に適当であるか
  5. 溶湯のノロはよく除去したか
  6. 鋳込み温度はよいか
  7. 取鍋の位置はよいか
  8. 湯を充分にセキ鉢に満しているか

注湯に際して細々と湯を入れないと、溶湯がセキ鉢からこぼれるような場合は、セキ鉢の形状や大きさを再検討しなければならない。鋳込に対して昔からいわれるように、「静かに早く」ということは大切なことで、当然、鋳造方案に依って決められるが、鋳込みに際しても充分セキ鉢に満たすことが必要である。又中大型鋳物には、よくストッパーが使用されている。鋳込む際の注湯の要領として、溶湯の1/2~2/3は出来るだけ早く鋳込み、溶湯を切らないようにして、残湯は静かに鋳込むという感じで作業を行うとよい。遠心鋳造などに於いては、特にこの点に留意してやらなければならない。

第3節 トリベ等鋳込用器具の種類及び使用法について知っていること

トリベには、杓取鍋、連台式取鍋、ギヤー付き吊上げ傾注取鍋、土瓶式吊上げ取鍋、円筒式取鍋、ストッパー式取鍋などの種類がある。
杓取鍋は、現場ではよく「湯汲み」と称しているもので、5~15kg程度の湯を運搬し、小物の鋳型に注入する器具である。連台式は、20~80kg程度の湯を運ぶもので、2人で連台式に行うものである。これ等は人力でやるものだが、モノレールを使用したりクレーンによって、トリベを運搬するものに、写真1.2.3などがある。
写真1は手動で注湯する簡便なもので、モノレールに吊り下げて使用される。写真4はその注湯作業しているところの写真である。
写真2は、ギヤーの付いた吊上げ式の取鍋で普通500kg~20,000kgまである。又溶湯にノロが、混ざって鋳型に入らないようにするために、ドビン口のように溶湯とノロを分離するようにした土瓶式の取鍋は、写真3のようなものである。又大型鋳物に、よく使用される取鍋では、写真3のようなものである。又大型鋳物に、よく使用される取鍋ではストッパー式のものがあり、写真1のような吊上式の取鍋の底部に溶湯の流出口があって、これをストッパーで押さえているものでノロが入らない、注湯温度の調整などに便利などの利点があるがこのストッパーの操作に熱錬を要し注入ヘットが大きいなど不順れのため思わぬ失敗をすることがある。

第4節 鋳込温度について知っていること

高温溶解は必要なことなのでその出湯温度は1500゚C以上の高温がよいが、鋳込み温度は必ずしも高いものが良いとは限らない。その鋳型の性状、大きさや溶湯の成分、溶解条件、製品肉厚の厚い薄い、大小などに依って種々違って来る。そうかという鋳込温度が低く過ぎれば湯境やピンホールなど不良の原因になる場合が多い。したがって、適温ということが大切である。

第2表 鋳込温度とすくわれ面積(例)
水分
3%
鋳込温度 注湯
時間
鋳込温度 すくわれ面積cm2
下型平面 垂直面 上型面
NO.1 1270゚C 1.4K/S
NO.2 1420゚C 1.4K/S 0.14 2.20 2.34

今、合成砂鋳型において、鋳型硬度、鋳込速度、砂の中の水分等を別個に考えた場合、鋳込温度が高いものほど「すくわれ」の現象がひどい、鋳物砂中の水分を変えずに、鋳込温度を変えた場合の状態を第2表に示す。溶湯の成分は3.27%C、1.89%Si0.76%Mn、0.15%P、0.004%Sである。
一般にFC15、FC20のように高炭素の溶湯は、流動性もよいので、1300゚C~1350゚C位で充分であろう。製品の大小にもよるが、低炭素低珪素のFC30位の溶湯になると、少なくとも1380゚C以上で鋳込みたいものである。
さて、金型鋳造ということになると鋳込温度が高いと、抗張力がやや減少し、硬度は高くなる。したがって低温で鋳込んだ方が材質的に優れたものが得られる報告が出ている。しかし金型鋳造の場合には、製品の肉厚、金型の肉厚、金型の予備温度、塗型剤の種類、鋳込速度などに依って種々の条件が違うので、まだまだ確定的なこととはいえない。

第5節 鋳込速度

溶湯の短時間当り断面積における湯の量を表わすが、鋳造方案をたてるに重要な事項である。この鋳込み時間は、複雑であって、

  1. 鋳物の形状、寸法、重量
  2. 使用する砂の性質又は、金型の肉厚、予熱温度、塗型方法
  3. 鋳型の条件
  4. 温度勾配
  5. 過熱度
  6. 溶湯の成分
  7. 流動性

など数多くの要素に含んでいる。この鋳込時間の決め方には、色々と文献が多いが、実際例と比較して、その工場独自に決めて行かなければならない。
鋼鋳物研究会の例をとると、第3表の通りである。

第3表 鋳鉄の鋳込み時間
鋳物重量(kg) <500 >500 >1000 <4000 >4000
鋳込時間(sec) 4-8 6-10 10-20 25-35 35-60

普通大低のものは1分以内で、小物なら5~6秒、大きな20t位のもので1分程度でこれ以上大物でも2分以内に鋳込むべきだといわれている鋳込時間に就いてDietertは、次式で算定している。
鋳込時間(sec)=K×√W
W:鋳込重量(1b)
(0.74)K=1.1鋳物の肉厚7/64~9/64のとき
1.25〃10/64~20/64〃
(1.0)1.5〃21/64~39/64〃
そこで鋳込時間に適するように湯口の大きさ、高さ、数などを決める。又、R,W,Wfiteは、ダクタイル鋳鉄の鋳込時間=0.65×√鋳込重量なる式を用いている。これをkg、cm2で換算すると、
鋳込時間(sec)=0.97√W(kg)
絞り面積=W(kg)/t(sec)/1.125
16Ib/m2/sec=1.125kg/cm2/sec

第3図

これに関して実際に生産されている鋳物について、日本鋳物工業会で調べた実績では、300kg以下の小物は、0.8~1.0kg/cm2/sec、それ以上のものは1.1~1.2kg程度であったと報告されている。第3図は、重量と鋳込時間の関係を示す一例である。
現在一般に使用されている鋳込時間は計算値よりも、低い値を示している。やはり、「静かに早く」と早い方がよい鋳造方案を決める始めに、鋳型に鋳込まれる工場の量を単位時間に単位面積当り0.9kgとか1.1kgとか、その製品の形状、大きさから決定し、それから、セキの面積、鋳込時間を決めることも一方法であろうと思う。