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鋳物ブログ

鋳造作業法

第5章 鋳型製作基本作業

基本要領

1.作業者の位置と道具の置き方

型込場の状況により一定しないが、作業者はなるべく道具類を身近にしかも体を動かさず、かつ取扱いやすい位置に措く必要がある。使いおわった工具は必ず元の位置に返し、常に使いやすいようにして置く。Fig43は砂型による小物の枠込作業の場合の一例を示す。要はできるだれ作業者の手のとどく位置に置くことがのぞましい。

Fig43作業者の位置と道具の置き方

2.定盤のすえ方

上面は絶えずきれいにし、がたのないように安定させるため土間にすりこむ。

3.鋳枠の選定

鋳枠は特別の場合の外は新しく作らず、既製のものを用いるが、枠の選定に当っては次のことを考える。
(1) 木型に適した大きさで、上下枠が一組となっていること。
(2) 砂付寸法が十分にあり、上下枠の四すみが堅固で、がたつかない木枠
(3) 湯口位置と湯道が切れるだけの砂付きが十分で、上下枠の厚みは堅くずれしない程度

4.下枠の置き方

下枠の内側をはじろ水でぬらし砂の付きをよくする。定盤の上に下向きに伏せ、四すみを押してガタつかぬかどうかを調べてからガタがあれば低い所へ砂をかまして安定させる。

5.木型のおき方

木型の位置は抜勾配によって上下方法をきめるが、仕上面または鋳物の重要鋳肌面は下面とする。木型は絶えず奇麗にし、でかるだけ安定した状態におき、かつ湯口、堰の位置ならびに木型周囲の砂付寸法のことも考える。

6.肌砂の入れ方

平らな木型と凸凹の木型とでは肌砂のふるい込む厚みは異る。高い木型を全部肌砂で覆うことは手数がかかるので露出部分は手で覆ってやる。平らな木型は2~3cmの厚さの肌砂をふるい込むだけでよい。
節は目が細かいほどつまり易い。なるべくふるいの網を湿さず、また込砂や土間砂に触れないように伏せておくことが大切である。

7.突き棒、スタンプの使い方

Fig44突き棒のつき方

突き棒、スタンプの突き始めと終わりの順序はFig44,45,46のように行い、特に突き棒は、枠のきわ、木枠のすみ部、くぼんだ所の砂をつき固めるが余り乱暴について傷つけないように注意する。木枠の上部や周囲は、枠のまわりから軽く突く。しかし余り軽く突いて砂が弱いと注湯のとき砂がくずれて流されたり、枠かぶせのとき砂落の原因となる。できる限り木型面上の砂のかたさを均一に、枠側に近づくほどしっかりと砂をつき固めるとよい。

Fig45突き棒のつき方
Fig46スタンプのつき方
Fig47つき固め方の注意

[註]スタンプした後にそのまま砂をもってスタンプすると応々にして型返しをするとき砂がはばれおちるから、その場合には必ず表面をかき荒らしてから砂を入れ、スタンプする。

8.気抜針の使い方

気抜針は太いものを浅くさすより、細くとも肌に達する深さまで深くさすようにした方が効果は大きい。
集中的に気抜針を使用する必要があるかどうかは、あらかじめ良く検討しておく必要がある。針を抜く場合は人差し指と中指で針を押さえて静かに抜く。気抜針で穴を数箇所あけた後、掌で軽くたたいて平らにする。又気抜針で気抜穴をあける場合には、針の長さを鋳枠の深さに合わせて持ち、肌砂にとどく程度に針をさす。

9.鋳型枠の反転法

定盤や枠の取手に積もった砂を払って綺麗にし、下型を返して定盤の上に置く。Fig48の順序に従って鋳型枠を反転する。

Fig48鋳枠の反転順序

[註]下型を反転するとき、木型が平らであったり金型で重い場合は、反転の際は現型が抜け落ちるから、鋳型と定盤を同時に合せたまま、反転するために、木型定盤の軽いものを使用する。また定盤の大きさは鋳型を同時に持てる程度の大きさが適当である。

10.鋳型表面のならし方

反転後、木型と定盤の間に肌砂が食込んでFig49のようになるから食いこんだ砂を払いのけ木型との見切面をなで付ける。へらはFig50のようにもち、前後左右に動かしながらなで付ける。このとき動かす方向を少し上向き気味にしてなで付けるとよい。

Fig49木型面上に砂のかぶされた図
Fig50平面のへらのなぜ付け要領

[註]一般に木型の面は砂面より低くなりがちであるから、木型の見切面をしっかりなで付けて、木型より砂面の方が心持ち低い目になでつける。
下型面のなで付けに使用する道具は、さじべらを使用する。面の広い、狭いにより、へらの大、中、小をされぞれ使い分ける

11.仕切り砂のまき方

仕切り砂は粘土分のない細粒ケイ砂、または川砂、海砂を用いる。これは上型と下型とがよく分離するために用いるため、表面全体に平均に肌砂が見えなくなるまで撤く。木型の上の砂は、筆で払いのけるか目吹でふきとばす。まき方の要領は、仕切砂を軽く握り、指のすき間から一様にこぼれ落ちるようにまく。まく手の動きはひじを中心として柱時計の振子の速さ位で前後に振る。
小物などはパーチングポーダを布袋に入れてふりかける。これは袋を右手にぶらさげ、左手ではたきながら型面全体にふりかける。
[註]パーチングポーダは細粒ケイ砂にローを加えたもの。凹んだ箇所にこのポータが積っていると鋳肌の表面が弱くなったり、鋳肌がきたなくなるから、金型の砂のしみつきを防ぐためにこのポーダをふりかける場合は、わずかに平均にふりかける。

12.上型の込め方

下枠のときと同様、上枠の内側をはじろで湿し下枠の上に正しく重ねて合わせるとき、上枠と下枠とに多少のガタがあるが、この場合はすきのある方に砂をかませてがたを防ぐ。

13.合印の切り方

上型と下型とを重ねるとき、鋳枠にピンやだぼ等があれば、それにより型合わせができるが、これのない場合には合印をつける必要がある。
合印をつける前は、鋳枠の周囲に前の合印の真土が付着しているからこれをへらでかきとる。印をつける位置は鋳枠の前方2箇所とと側面1箇所を普通とし、その部分を水筆で水または粘土水でぬらす。前側の2箇所の合印は上型が曲った場合見わけ易く、側面の1箇所は前後のずれを見分ける前方2箇所の距離は大きい程効果がある。又合印は合わせを確かめるため、真上からのぞくてよい。
枠のしめった部分にさじべらで印まねをなすりつけて表面を平らにならし、へらで型の合わせ目に添って切れ目をつけ、再び表面を軽くなで、1~2本の縦線を入れる。Fig51,52に合印の切り方を示す。

Fig51合印の作り方
Fig52合印の付け方

[註]印真土は通常肌砂にはじろ水を入れて練る。

14.湯道の切り方

単体木型、割り木型の場合、木型を取り除く前に湯口棒下の跡に湯口底をへらの曲面の方にて作り湯道、堰を切ろうとする位置に水筆で軽く水を引き、湯道と堰の部分を切る。その際堰先の部分は木型を上げてから、へらの先で鋳型から外へ向って、所定の大きさに砂をすくい取るように堰先の形を整える。
[註]湯道を切る線に沿って水を引く際あまり水を余計に引くと湯道の部分の砂が重くなって注湯の際吹かれの原因となるから注意を要する。
鋳型を数多く作る場合は湯道、堰の形の木型か金型を作り木型と一緒に成型すとると能率的である。

Fig53せきと湯口の形状図

注湯後堰の部分を折って湯口を取り除くので、堰をあまり太くしたり、面取り等すれば堰部が凸出して鋳物に残るか、鋳物をかき損じで身食いをする場合がある。Fig53のABC部はなるべく角張らせておく。湯道の断面積は湯口下断面積は湯口下断面積の1/2~3/4程度がよいといわれている。

15.木型の上げ方

Fig54水筆の使い方

水筆の持ち方と、木型周辺の水筆の使い方はFig54に示す如く、水筆を絞りながら筆先から水のたれ止まる程度で、木型のまわりに水を引くのであるが、この際木型をぬらさぬようにして、木型から多少離して引く、木型がぬれると砂の離れが悪く型抜きは困難となる。
木型を抜く要領は、型上げ針を木型の重心部に軽くかつ型上げ途中で抜けない程度に打ち込み、豆ハンマーか丸い鉄棒等で、前後左右にたたいて木型をゆるめ、鋳型をこわさないように注意する。
[註]木型を抜く場合は、まず左手で種上げの軸を持ち、その項部を中べら程度のもので軽くたたきながら静かに上げ、木型を左手で上下に動かし、漸次振幅を少なくしながら上げ、鋳型から木型が離れるときはもはや上下動きをやめ静かに抜き、鋳型から抜けたらすみやかに鋳型の外に遠ざける。
左手は軸のきわを持ち小指で軽く木型を押さえるようにすると木型のゆれを防ぎ、かつ作業者は木型の周囲を見て木型が平均に平らに抜けるのを注視する。
型上げの先端を木ねじ状にしてねじ込むようにすれば一層安定する。すなわちへらの先を水でぬらしてへらを後方にひくようにして砂をへらにつけて除けば、砂は鋳型内に落ちずにすむ。

Fig55木型の誤ったゆるめ方 Fig56木型をあげる時の力の入れ方

矢印は木型をゆるめる
力の強さと方向を示す

しまのきれつを生ず

16.鋳型の繕い方

木型を抜いた後に鋳型の破損箇所を生ずる。これに対し水筆で湿し、こわれた部分が浮いた場合は静かに押え、次に横からならし、更に矢の方向へ押える。型の一部が欠け落ちたときは、Fig57の(1)に示す如く砂をへらにつけて補充し余分の砂はへらで切り落としてつける。

Fig57①鋳型の繕い方

17.塗型の仕方

塗型は鋳型の耐火度を高めて砂の焼付きを防ぎ、砂離れをよくして鋳肌を美しくするために用いる。一般に黒鉛またはきら(雲母粉)粉を、ふりかけるか平筆で塗る。肉厚物の乾燥型等には良質黒鉛等をはじろ水で練ったくろ味を準備する。
ふり塗型は、砂の焼付けを防ぐに有効である。黒味塗型、引き塗型は焼付けを防止し、鋳肌のために有効である。特に引き塗型は突角部の砂を筆先で削って丸くしたり、スミ部の部分に黒鉛、きら粉がつもって、角が丸くなったりして塗料剤が固着すると、注湯の際にこれらが溶湯の表面に浮いて鋳物塗料に吹き寄せの原因となる場合がある。黒味塗料は、粘結剤の濃度と材料の材質を吟味し、平均の厚さに塗型して塗料のだれを生じないように注意する。
[註]黒鉛、きら等のふりかけの場合は、垂直面より先にふりかけるように行う。
黒鉛粉やきら粉を平筆で塗型する場合、平筆の穂先に充分粉末を含ませて垂直面の下部より上部に向かってはき付けるようにするが、粉末の量が穂先に少なくなると鋳型の砂を削る。鋳型のすみは特に粉末がかたまり附着し角を丸くし易いからよくはき取るか、目吹でのぞく。又かわいた上に改めて黒味塗料の上塗りをすると黒味が注湯時はがれ易い。

18.上型のかぶせ方

上型を下型の外で反転してくる。上型下型の合印を会せるには、見切面の高低により、上型を所定の高さまでもち上げ、それ以後は真直に合印を見て降す。この際、手首に余り力を入れずに上膊部を体にひきつけ、体全体で型合せするようにする。
[註]上型をかぶせ終わったら、少し押し付けて上型と下型とを密着させる。

19.鋳型のならべ方

Fig57②むせきの仕方

鋳型は注湯がしやすいように工夫して並べ湯口の位置、方向、通路の関係を考えて配列する。
抜粋鋳型のむせきの仕方はFig57に示すようにするとよい。
特に型場のせまい場合はFig58のとおり立体式に鋳型を重ねて型場面積を有効に使用するとよい。
Fig58立体鋳造の一例

20.重しのおき方

注湯の際に上型が軽いと湯の圧力で押し上げられ、型合せ面から湯もれを生ずるから下型と締め付けるか、または重鍾をおく。この際に重しは静かにおき、かつ局部的な重さのかからないようにする。重過ぎ、締め過ぎは型押し、型亀裂を生ずることもある。注湯の際、上型を押し上げる力の計算はFig59に示すが、実際注湯においてはさらに取鍋から鋳型までの高さ、流速などが働くので5~10倍の安全率を十分にみた重鍾が必要となる。
[註]中子が入る場合中子の受ける浮力を更に加える必要がある。

Fig59重鍾の計算法
W=上型の重さ(鋳枠および砂の重さ)
MM’面に働く圧力P=Arh
上型を上方に押し上げる圧力P゚=Arh-W
ゆえに重しの重さは(Arh-W)以上が必要である
P=MM’面に働く力
r=溶湯比重
A=MM’面に接触する面積
h=鋳物上面より湯口の高さ