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鋳物ブログ

鋳物よもやま話

鋳物技術Q&A

鋳物づくりの歴史は古く、鋳物はその時代の人々の生活を支えて来た。
鋳物をつくるプロセスを鋳造と言うが英語ではFoundry(ファンドリー)と書き「基礎」(Found)なる産業を意味する。
日本の産業を支える、自動車、工作機械は正しく鋳物の固まりであり、日常的には食卓でのスキ焼用の鍋、路上でのマンホール蓋、街路灯、お寺の釣り鐘など身近な所で多くの鋳物製品を見ることができる。
鋳物づくりに永い歴史を持ち、鋳物づくりにこだわりつづける当社が鋳物への素朴な質問に答え、鋳物づくりの面白い世界へ御案内します。

Q1.素朴な質問ですが、鋳物はどうしてできるのですか?

A1.

素朴な質問への答えが実は一番難しいのですが、一般に金属は常温では固体ですが、熱を加えると溶けて液体となり流動性を持つようになり、鋳型と言われる凹みにこの溶けた金属を流し込む(鋳込む)とやがて固まり、金属製品(鋳物製品)ができます。
もう少し詳しく述べますと、溶けた液体状態の金属の粘度は極めて低く、(普通の水の動粘度を1とした時、鉄は0.5~0.7)細かい形状のスキマにも入り込み精緻な形状づくりが可能となる訳であります。
一方、もう一つの大きな理由は、溶けた金属の表面張力は一般の水に対し25倍程高く、砂を固めて作られた鋳型にも金属がしみ込まない大きな要因であります。
「水は方円の器にしたがう」という説がありますが(方円とは色々な形)正しく溶けた金属は前記の特性を持ちつつ、方円の理にかないやがて固まり鋳物製品になります。

写真1

写真は、岐阜県で行われた未来博の時のキャラクターである彦丸君(長良川の鵜をデザイン)の鋳型を作り、溶銑が鋳型の中を流れる様子を写したもので、真赤に溶けた液状金属が静かに流れる様は見る人に鉄の不思議さを感じさせ、照明を消した中にうかび上がる彦丸君は今にも動きだすような感動を与える。

Q2.鋳物の歴史は古いのですか?

A2.

気が遠くなる程古く、文献によれば紀元前3500年程からの歴史があり、当時は石を彫って作った型に、溶銅を流し込む技術が有り、メソポタミア(現在のイラン、イラク)地方を中心に斧などの鋳型と製品が確認されております。
鋳造技術の普及は集団の首長が専門の技術者をかかえ、農業用具、装飾品、武器などを製造し、しだいにその地域を統治し、階級的社会に移る基盤となったと言われます。
エジプト(紀元前3200年)、メソポタミア(同2300年)、中国(同1600年)などに形成された初期の統一国家がこれであります。
我国、日本への技術の伝来は、中国大陸から朝鮮半島を経て、弥生時代中期(紀元前100~100年)ごろと思われ、まず大陸から渡来した鋼剣などの倣製が行れ、大阪府茨木市で当時の石製鋳型が発見されている。(以上「鋳造技術の源流と歴史」から)
以上のように鋳造の歴史は5000年におよび、人間の知恵と努力の結晶とも言えます。


青銅扉の鋳造作業の壁画

青銅は、4本脚のふいごによって送風された露天火のなかのるつぼで溶かされている。木を曲げたものが、るつぼをもちあげ、中心にある鋳型にはこぶためにつかわれ、その鋳型には、一連の湯口がある。右方の1人は、雄ウシの皮の形をした鋳魂を運んでいる。(テーベの墳墓出土、紀元前1500年ごろ)。「技術の歴史」より

Q3.鋳物と鋳造はどのように違うのですか?

A3.

一般に鋳物と鋳造を同意語として用いられますが、詳しくは少し異なり、類似した言葉を列挙しますと、鋳物、鋳造、鋳鉄、鋳鋼、銑鉄などがあり、一般の方には判りにくいようです。

鋳物:鋳造技術を駆使して作られた製品
鋳造:金属を溶かし鋳型へ鋳込んで製作する工程
鋳鉄:鋳物製品の代表的な材質名称
鋳鋼:鋼を溶かして製作した製品
銑鉄:鋳鉄鋳物を作る時の主原料

従って、鋳物の前に金属の名前が付けば「アルミ鋳物」とか、「銅鋳物」となり、使用例として、「鋳造技術を駆使して精密な鋳鉄鋳物を製作した」などの使い方となります

Q4.鋳物は昔から強度が弱いと聞いておりますが?

A4.

これはQ3と関連し、鋳物と言うと鋳鉄鋳物を連想しがちであった名残りであり、今から30~35年位前の状況から出た言葉と思われますが、現在は使用目的により引張力は450Nから800Nは一般的であり、鋼以上の強度を有するダクタイル鋳鉄が有り、鋼の鍛造品から多くの製品が鋳鉄鋳物に置換されております。
更にはオーステースト鋳鉄と言う鋳物製品は1200N程の強度を有し、ハイテンションスチールを超える強さを持っております。
我々は日常的に交通手段として自動車を用いておりますが、自動車の主要部分は鋳物製品の「カタマリ」であり、強度的にも性能性にも安定しているから、高速道路を安心してドライブができる訳です。