鋳物ブログ
第3章 鋳鉄の物理的および機械的性質
第1節 鋳鉄の物理的性質
鋳鉄の物理的性質は、化学成分と組織によって変わる。工業用一般鋳鉄の物理的性質を表3・1に示す。
比重 | 溶融点゚C | 熱膨張係数 | 比熱 (0~100゚C) |
熱伝導率 (cal/cmsec゚C) |
電気比抵抗 |
---|---|---|---|---|---|
7.1~7.3 | 1,150~1,250 | 10~11×10-6(0~100゚C) 13×10-6(0~500゚C) |
0.13 | 0.110~0.137 | 30~150 |
比重は炭素とけい素の多い粗い破面の鋳鉄では7.0に近く、炭素とけい素の少ないち密な白銑では7.7であり、このように黒鉛の含有率によって変化する。普通鋳鉄では7.1~7.3ぐらいが多く、鋳物の重量計算においては7.25の値を取っている。
第2節 鋳鉄の機械的性質
1.引張り強さ
引張り強さは鋳鉄の機械的性質を代表するもので、鋳鉄の材質を表わす目安となっている。鋳鉄の引張り試験は割合正確な結果が得られるが、ネズミ鋳鉄の引張り強さは10kg/mm2から35/mm2まである。
炭素とけい素の多い鋳鉄では黒鉛が粗大となるので引張り強さが低く、逆に炭素やけい素の少ない鋳鉄では引張り強さが高くなる。又引張り強さは鋳物の肉厚や大きさによって変化し、肉薄のものは引張り強さが高く肉厚のものは引張り強さが低い。
原則的には引張り強さの高いもの程鋳造が困難であり、従って価格は高い。
ある一定の寸法の鋳鉄について炭素(または共晶)飽和度Scと引張り強さとの関係を図3・1に示す。
2.圧縮強さ
鋳鉄の圧縮強さは引張り強さの3~4倍に達するといわれているが、引張り強さの低い鋳鉄ほどその比の値が大きくなる。その関係を表3・2に示す。普通圧縮試験は行わない。鋳物は機械のベット、支柱などに用いられるがそれは圧縮強さの高い性質を利用している。
引張り強さkg/mm2 | 圧力強さ/引張り強さ |
---|---|
11~14 | 4.08 |
14~18 | 4.02 |
18~21 | 3.68 |
21~25 | 3.61 |
25~28 | 3.39 |
28~35 | 3.31 |
3.かたさ
鋳鉄のかたさは黒鉛の大きさ、形状、分布状態 および黒鉛量と基地の組織に影響される。炭素とけい素の多い鋳鉄ではかたさが高くなる。
図3・2はその関係を示すが炭素飽和度Scの小さいものはかたさが高い。
普通鋳鉄のかたさはブリネルで150~260の範囲で200前後のものが多い。基地にセメンタイトが混じってくると260以上となり、切削が困難となる。
又焼なましでフェライト化した鋳鉄のかたさは100~140ぐらいで切削性が良好となる。
4.抗折力
鋳鉄の強さを測るのにしばしば曲げ試験を行う。ねばり強さは抗折試験によるたわみを測定する。その方法は試験片を一定距離の支点でささえ、その中央に荷重をかけて破談した時の最大荷重を抗折力、そのときのたわみをもって粘さを表わす。
抗折力は、一般に引張り強さの1.5~2倍の値でこの関係を図3・3に示す。
図3・1 引張り強さと炭素飽和度との関係
ただし、Sc = T・C / 4.23 – (Si / 3.2) による |
図3・2 かたさと炭素飽和度との関係
Sc = T・C / 4.23 – (Si / 3.2) |
図3・3 抗折力と引張り強さとの関係 |
5.耐磨耗性
磨耗とは、金属の酸化と金属同士の機械的なむしりとり、或は粘着的なむしり取りである。磨耗の段階は、酸化磨耗、粘着磨耗、溶着磨耗を経て進行する。
鋳鉄は磨耗によく耐える材質である。酸化および粘着磨耗では、鋳鉄中の黒鉛が少しづつはく離して潤滑の役割をすると同時に黒鉛のはがれた小さな穴が潤滑油の湯留まりになると考えられている。
したがって黒鉛の大きさ、形状、分布状態が耐磨耗性に大きく影響する。
また基地も耐磨耗性に影響し、パーライト組織のものが耐磨耗性がすぐれ、フェライト組織のものは劣る。
りんを0.5~0.7%含有するステダイト組織が現われ、耐摩耗性を向上する。
第3節 炭素当量と物理的性質
鋳鉄の機械的性質はその含有する成分によって影響される。炭素は一番強く影響するので炭素量と鋳鉄の性質が比較される。しかしその他の元素中けい素、りんも影響するので炭素に換算し、その値を炭素当量(C・E)といっている。炭素当量は次のように表わす。
けい素が最も強く影響するので
炭素当量=炭素量%+1/3(けい素量%)
りんは多少減少するので、
炭素当量=炭素量%+1/3(けい素%+りん%)
1.炭素当量と顕微鏡組織
ネズミ鋳鉄の片状黒鉛の大きさ、形状および分布状態は鋳鉄の性質を最も大きく左右する。普通鋳鉄では黒鉛が均一に分布した場合引張強さは最も強くなる。
図3・4は炭素当量と黒鉛の大きさの関係を示したものである。黒鉛の大きさはASTMの番号で表わしたがNO1が大きく、NO8は最も小さい。炭素当量が増加すると黒鉛の大きさは大きくなる。黒鉛があまり大きくなると引張強さが減少する。
りんは炭素当量が小であるとき、黒鉛の大きさにあまり影響しないが炭素当量が大になると黒鉛の大きさを均一にする傾向がある。
図3・4 炭素当量と黒鉛の大きさの関係 |
図3・5 炭素当量と遊離フェライトとの関係 |
図3・5は炭素当量とフェライトの関係を示した。炭素当量が増加すると低りんの鋳鉄ではフェライト量が増加する。フェライト組織は軟かいので、切削性を重視する場合この方を望んでいる。
りんの量が多くなると炭素当量が増加してもフェライトは増加せず、組織はパーライトになる。
2.炭素当量と引張り強さ、抗折力、たわみとの関係
図3・6は炭素当量と引張強さの関係を示す。炭素当量が増加すると引張強さは減少するのは黒鉛量の多い程、鋳鉄は弱くなる。
炭素当量が4.9から3.8に減少するにしたがい引張強さは減少するのは黒鉛量の多いほど、鋳鉄は弱くなる。
炭素当量が4.9~3.8に減少するにしたがい引張強さは増加し、炭素当量3.5から2.9まで引張強さは変わらない。
図3・6 炭素当量と引張強さのと関係 |
図3・7 炭素当量と抗折強さとの関係 |
図3・7は炭素当量と用途抗折力の関係を示すと、炭素当量3.6~3.8の間で抗折力は最高に達する。
3.炭素当量とかたさとの関係
図3・8は炭素当量とかたさの関係を示したが炭素当量が2.9から3.6に増加するとかたさは低下する。肉厚1/4”、1/2”、3/4”のかたさも示したが寸法の小さいものはかたい。鋳鉄の性質に影響する冷却速度の関係を理解でき、炭素当量が増加するとその影響は少なくなる。
4.ブリネルかたさと引張強さの関係
鋳鉄のかたさと引張強さの関係を図3・9に示すが、引張強さはかたさと共に増加する。ブリネルのかたさが260以上になると引張強さは増加しない。
図3・8 炭素当量とかたさの関係 |
図3・9 引張強さとかたさとの関係 |
5.炭素当量と流動性の関係
湯の流動性は肉厚の鋳物を鋳造する場合に重要である。鋳込温度を1480゚Cと一定にし、炭素当量との関係を図3・10に示す。
炭素当量が4.5まで流動性は増加するがそれ以上になると湯の流動性は低下する。
図3・10 炭素当量と流動性との関係 |
図3・11 炭素当量と内部収縮との関係 |
図3・12 炭素当量と比重との関係 |
6.炭素当量と内部収縮
鋳物の内部収縮と炭素当量との関係は図3・11に示す。炭素当量が増加すると内部収縮も増加し、その値が4.3いじょうになると急激に増加する。また鋳鉄中のりんも影響し、その量が多いと内部収縮も大きい。
内部収縮の原因については明確でないが炭素当量が4.3以上で過共晶成分となり、凝固する時に一時黒鉛が晶出し、溶銑が中心部に集まるのを妨害するためである。
7.炭素当量と比重との関係
炭素当量とひじ雄途の関係を図3・12に示すが炭素当量が4.9から3.0に減少する間に比重は6.9から7.39と増加する。
8.炭素飽和度
炭素当量の代りに炭素飽和度Scを用いてもよい。
Sc = 全炭素 / 4.23 – (Si / 3.2) または Sc = 全炭素 / 4.23 – (Si / 3.2) -0.275P
炭素飽和度はその含有する炭素量とけい素、りんの量で修正した共晶値との比を表わしたものである。
すなわちSc=1では丁度共晶となり、黒鉛とオーステナイト(γ固溶体)同時に晶出する。Sc<1は亜共晶成分、Sc>1では過共折成分となる。
Scの減少と共に引張り強さが増加する。
第4節 鋳鉄の組織
1.鉄-炭素平衡状態図
ABCD液線AHJECF固線SE、Acm線GSK、A3変態点PSK、A1変態点A1530゚C
純鉄の融点、B1490゚C0.36%C、C1130゚C、H1490゚C、J1490゚C0.2%C、
N1400゚C、E1130゚C1.7%C、G910゚C、P726゚C0.025%C、S726゚C0.9%C
図3・13 鉄-炭素系平衡状態図
一般に合金成分と温度との関係を表わしたのが平衡状態図で図3・13に示す。
鉄に対して最も大きく作用するのが炭素でその他の元素けい素、マンガン、りん、いおうなどは如何に影響するかということにすぎない。
その状態図では実線と点線とで二重になっているが鉄中の炭素は黒鉛になったり、あるいはセメンタイトになったりする。
点線は鉄-黒鉛系を表わし”実線は鉄-セメンタイト系を表わしている”
炭素量が1.7%以下を銅、17%以上を鋳鉄と区別しているので以下鋳鉄の状態図について説明する。
鋳鉄が溶融しているとき(図中のABCD以上)には、炭素は鉄中に溶けて、均一な融液となっている。
これを冷却すると、冷却速度の遅速によって、炭素が黒鉛として分離したり、あるいはセメンタイトとなったりする。
亜共晶(炭素量4.3%以下)として3%の鋳鉄を徐々に冷却すれば約1320゚C(BC’線)凝固が始まり、固溶体すなわちオーステナイトを唱出し、温度が下降するにつれて固溶体の成分はJE’線にそって変化し、残りの融液はBC’線にそって変化する。
この間、始めに晶出ししたオーステナイトと、あとから晶出したオーステナイトとは炭素の溶け込んでいる割合が同一ではないが、それは拡散作用によって均一となる。
温度が1152゚C(EF’線)に下降すれば、鋳鉄はE’のオーステナイトの初晶と、残りはC’の共晶割合の融液とになる。
もし鋳鉄が黒鉛の分離に適しているときは、融液はここでオーステナイト’Eと黒鉛の共晶になる。
さらに温度が下降すれば、オーステナイト中の炭素はE’S’線にそって減少し、余分の炭素は黒鉛として分離する。
温度がS’K’線に下降すれば、このオーステナイトは炭素がS’の成分となり、ここでオーステナイトがフェライトと黒鉛との共折になる。鋳鉄がきわめてゆっくり冷却したときは、フェライトと黒鉛の組織に入る。もしも鋳鉄の冷却が速いときには、オーステナイトのの初晶は1140゚C(EF線)でE(1.7%C)となり、また残りの融体は、C(4.3%C)においてオーステナイトとセンタイトとの共晶(レデブライト)になる。さらに温度が下降すると、オーステナイト中の炭素量はES線にそって減少し、余分の炭素はセケンタイトとして分離するので、721゚C(SK線)では、オーステナイト中の炭素は0.9%となり、フェライトとセメンタイトとの共折、すなわちパーライトになる。したがって、このときの鋳鉄はセメンタイトとパーライトとである。
2.マウラーの状態図
鋳鉄の組織は主に炭素量、けい素量、冷却速度によって変化する。
この三因子の中、冷却速度を一定にしたときに鋳鉄の組織は炭素とけい素量によって影響される。この関係を明らかにしたのがマウラーの状態図である。
標準冷却速度の条件は乾燥砂型を用い溶銑を1250゚Cから75mmの丸棒に鋳造する。鋳鉄の成分中マンガン1%、りん0.3%、いおう0.1%とし、炭素およびけい素量を変化させる。
マウラー状態図を図3・14に示すが図中のA点は鉄-炭素系の共晶点4.3%で、B点は白銑とねずみ銑の境界で炭素1%、けい素2%に相当し、実験上ではこの成分以下の鋳鉄は黒鉛を晶出しない。C点は炭素1%、けい素7%に相当し、これ以上の成分の鋳鉄は全炭素が全部黒鉛になって化合炭素即ちセメンタイトは存在しない。
ABは白銑とネズミ銑との境界で、ACはパーライトおよび黒鉛を含むパーライト鋳鉄とフェライトおよび黒鉛の極軟鋳鉄との境界である。
また炭素1.7%以下が炭素鋼、それ以上が鋳鉄でその境界としてXY線を引き、BからB’点を求めてAB’線を引き、DからD’点を求めてAD’線を引けば全体がⅠ、Ⅱa、Ⅱ、Ⅱb、Ⅲなる区域に分けられる。
区域と組織の関係を表3・3に示す。
区域 | 組織 | 名称 |
---|---|---|
Ⅰ | パーライト+セメンタイト | 白銑 |
Ⅱa | パーライト+セメンタイト+黒鉛 | まだら銑 |
Ⅱ | パーライト+黒鉛 | パーライト銑鉄 |
Ⅱb | パーライト+フェライト+黒鉛 | 普通鋳鉄(ネズミ銑) |
Ⅲ | フェライト+黒鉛 | 極軟鋳鉄 |
図3・14 マウラーの状態図
もしも冷却速度が標準冷却速度より大であれば、各境界線はA点を中心とし全体が左方移動し、標準冷却速度が小であれば、全体として右方に移動する。
図より炭素、けい素量の低い程、炭素はセメンタイトとなり、炭素、けい素量を増すと炭素は黒鉛となる。
また、図中のハッチングを施した部分は肉厚10~90mmの鋳物で完全なパーライト組織になる。
図3・15は肉厚と組織の関係を示したもので、炭素とけい素量の少ないほどパーライト組織になる。
図3・15 鋳鉄の肉厚と組織
3.黒鉛の形状と分布
図3・16 各種黒鉛の形状
鋳鉄中に存在する黒鉛の形状と分布は化学成分と溶銑が凝固するときの冷却速度によって影響される。
黒鉛の大きさは大きいものは数mmのものから小さいものは顕微鏡的なものまで、種々の大きさのものもある。
その形状も直線状のもの、塊状のもの、紛ったもの、粒状のものなどで図3・16のように4種類に大別できる。
一般に炭素、けい素量の多い場合、黒鉛は粗大化し、それらの量の少ない場合、黒鉛は微細化する。冷却速度の影響についてはけい素を2%位にしたとき黒鉛の変化を示すと図3・17のようになる。
図3・17 黒鉛の形と成分、冷却速度との関係
図のaは炭素量2.5%位の組織で、初晶デンドライトの境界に片状黒鉛が折出し、地は大体パーライトである。
bはaよりも冷却速度の早い場合で初晶デンドライトの境界に片状黒鉛の代りに共晶黒鉛が折出し、地はフェライト化する。
cは炭素量3~4%のものの組織で片状黒鉛が折出し、地はパーライトである。
この黒鉛の比較的短かく、わん曲しているので菊目組織といわれる。
bはcよりも冷却速度の速い場合で中心部に微細黒鉛を生じ、その周辺部に片状黒鉛が発達している。このような組織をバラ状黒鉛といわれる。
図3・18 片状黒鉛の形状と分布(A.S.T.M)
eは炭素量4%以上のものに現われる組織で、片状の大きな初晶黒鉛(キッシュ黒鉛)と短い片状黒鉛と地はフェライトである。片状黒鉛の形状と分布はASTM規格で図3・18の5種に分類され、その形状と特徴を表3・4に黒鉛形状が鋳鉄の性質におよぼす影響を表3・5に示す。
種類 | 形状その他の特徴 |
---|---|
A型 | 均一な分布、方向性なし |
B型 | はら状、方向性なし |
C型 | 片状の大きさ2種、方向性なし |
D型 | 樹枝状品簡偏折、共晶状、方向性なし |
E型 | 樹枝状晶簡偏折、やや方向性あり |
種類 | 特徴 | それぞれの鋳鉄の性質 |
---|---|---|
A型 | 一般に好ましい形状 | 機械的性質最良 |
B型 | 中心部にフェライト生成しやすい | 比較的高強度のものにはよくない |
C型 | 過共晶の高炭素鋳鉄に出る | 低強度、切削面あらい |
D型 | 急令された比較的高けい素のもの | フェライト生成しやいので好ましく ない切削性優秀、強度と耐磨耗性悪い |
E型 | 全炭素の少ないものに 方向性しばしば認められる |
金型に使用する強度が大で あるがいくぶんたわみが不足 |
4.フェライト、パライト、セメンタイト
鋳鉄の現われる組織は主にフェライト、パーライト、黒鉛、セメンタイトである。
各組織を理解するには鉄-炭素平衡状態図(図3・13参照)の炭素利用1.7%以下について再び説明する。
0.9%Cの炭素鋼は液線BC(約1470゚C)の温度まで融液であって、この温度まで下がると、一部の凝固が始まり、γ固溶体を晶出する。温度がさらにがるにつれてγ固溶体が増し、固線JE(約1250゚C)の温度で凝固が終わり、全部が均一なγ固溶体となる。さらに温度がさがると、S点でγ固溶体はα固溶体(フェライト)と炭化鉄(Fe3C)(セメンタイト)とに分解してその共折、すなわちパーライトとなる。
0.05%Cの炭素鋼は液線AB(約1520゚C)の温度で凝固が始まり、δ固溶体を晶出し始める。温度が固線AH(約1500゚C)までさがると、凝固が終わって、全部か均一なδ固溶体となる。さらに温度が下がると、NH線(約1480゚C)でδ固溶体の一部はγ固溶体にかわり、NJ線(約1410゚C)でδ固溶体の全部がγ固溶体となる。温度がGS線(約870゚C)までさがると、γ固溶体からα固溶体が折出し始め、同時に残りγ固溶体はGS線にそって、炭素の成分割合が増加し、PS線(726゚C)で0.9%となり共折する。
0.9%C以上の炭素鋼、たとえば1.2%C炭素鋼は液線BC(約1440゚C)で凝固が始まり、固線JE(約1180゚C)で終り、全部がγ固溶体となる。さらに温度がさがると、SE線(約890゚C)でセメンタイトが分離し始め、残りのγ固溶体はSE線にそって炭素の成分割合が減り、SK線(726゚C)で0.9%となって、ここで共折する。この温度以上では初折セメンタイトとパーライト組織となる。
- フェライト
固溶体で、鉄にごく少量の炭素が溶け込んでおり、0.9%以下の炭素鋼中に存在する。性質はやわらかく、延性が大きくて、強磁性体である。 - セメンタイト
鉄と炭素(6.67%C)との化合物で、0.9%以上を含む鋼中に遊離して存在している。性質は非常にかたくてもろい。 - パーライト
固溶体とセメンタイトの共折で、炭素含有量は0.9%で、フェライトとセメンタイトの中間の性質をもって居り、ねばり強い。
鋳鉄の組織強さの関係を表3・6に示す。
引張強さ kg/mm2 |
伸び % |
絞り % |
プリネル かたさ |
|
---|---|---|---|---|
フェライト | 20~29 | 60 | 31 | 75 |
シリコフエライト 0.82Si>0.1C 2.28Si>0.1C 3.4Si>0.1C |
31.5 46.5 54.0 |
50 50 21 |
91.6 85.0 28.7 |
88 124 150 |
セメンタイト | – | – | – | 550 |
パーライト パーライト鋼 パーライト鋼 0~0.8%Mn |
84 87 74~87 |
15 10 – |
– 15 – |
240 200 – |